7代目の社長として、会社の歴史と価値観を受け継ぐ
当社は昭和35年(1960)創業者である田中大三郎が会社を設立しました。元々、創業者は関西のフィルム業界で働いていましたが、独立して初めは大阪の豊中市で工場と事務所から事業をスタートさせています。大豊化学工業の名前の由来は創業者の名前「田中大三郎」の「大」の字と、創業者の実兄の名前「豊」の字を繋げて名付けたと聞いています。
本来は個人経営の会社ですから、息子や孫など親戚の人間が代々引き継いでもよかったはずですが、先代の社長は平等に人を評価し、二代目の社長は全く血のつながりのない人間に会社を引き継いでいます。その後も7代目の私に引き継がれるまで、血縁関係者以外の人間が社長に就任しています。個人で築きあげた会社にしては、とても珍しいと思います。
「人」を評価する伝統を守りながら、新たな改革にも挑戦する
私は昭和53年(1978)大豊化学工業に入社しました。大卒の人と同期入社でしたが、会社は学歴ではなく「仕事ぶり」を平等に評価してくれて、28歳で係長、34歳で課長代理、40歳で次長、48歳で部長とキャリアを築き、2017年に社長に就任しました。
私自身、正当に評価してもらって今があるわけですから、私も同じように学歴や性別ではなく「人」を評価する会社でありたいと思っています。2023年から、当社は組織体制を再編し、営業本部、業務本部、管理本部、製造本部の4つの部門に大別しましたが、この変更において女性2名が本部長・執行役員に就任しており、活躍してくれています。
「感謝」の念と「真作は永遠の友」の言葉を胸に刻んで仕事に取り組む
私が仕事をする上で大切にしていることは「感謝」の気持ちです。当社のような規模の会社は大体、親会社やメーカーの子会社として成り立っているものです。しかし、当社は大手企業の子会社ではなく100%独立して成り立っています。それができるのは、先代の社長や先輩方が築き上げた努力の成果だと思い、感謝しています。
また、仕入れ会社さんや運送会社さん、パートナーとしてご協力いただいている会社さん、関連するすべての会社や人に感謝しています。そして何より商品をご購入いただいているお客様にはもう感謝しかないですね。
私が仕事をする上で、いつも心にあるのは「真作は永遠の友」という言葉です。40年前、取引先の会社の商談室の壁に貼られている言葉を目にして感銘を受けました。真っすぐな心で「ものづくり」に取り組むことで、永遠の友達のような関係が築けることを、この言葉は象徴していると感じました。逆に、いい加減な気持ちで「ものづくり」をしていると、いつか自分に仇となって返ってくることを肝に銘じて、手を抜かず誠実な心で取り組むようにしてきました。40年前に見た、あの光景を今でも大切にしています。
幸せを追求し、会社の未来を切り拓く使命感
私の目標は「みんなを幸せにすること」です。関連会社やお客様が幸せになることを願い、また、社員が「大豊化学工業に入ってよかった」と感じる会社を築いていくことを志しています。私自身が大豊化学工業に入社し、社内結婚し、子供を授かり、現在は孫もいて、会社のおかげで幸せを掴むことができました。しかし、会社勤めはいずれ終わりがきます。その終わる時に何を思うかが大切で、社員達が「ここでサラリーマンとして過ごせて本当に良かった」と感じてくれるような会社を築くことが私の大きな目標です。そのためにも、会社の伝統を守りながら変革を試み、持続的な成長を実現させる努力を続けたいと思っています。
昭和53年(1978)「大豊化学工業」に入社。20代で係長、30代で課長代理、40代で部長へとキャリアを築き、平成29年(2017)社長に就任。現在は経営管理に携わり、会社の伝統を守りつつ、積極的に社内改革にも取り組んでいる。
山田 芳明